障害年金って何なの?
公的年金と障害年金
●公的年金は2階建て構造
障害年金は公的年金制度から支払われる給付の一つです。
公的年金制度には国民年金、厚生年金、共済年金の3種類があります。
この制度は2階建て構造になっています。
1階部分の「国民年金」は、3種類の公的年金制度に共通する基礎部分です。
この共通部分の年金は強制加入となっています。国民年金にのみ加入している人は、自営業者、サラリーマンの妻、学生、失業者などです。
2皆部分の「厚生年金」「共済年金」は上乗せ部分です。民間のサラリーマンや公務員などを対象としています。つまり、サラリーマンや公務員などは国民年金と厚生年金・共済年金の両方の制度に二重加入していることになります。なお、平成27年10月からは共済年金は厚生年金に統合されています。
●サラリーマンはダブルでもらえる
では、障害年金は各年金制度からどのように支給されるのでしょうか?
自営業者やサラリーマンの妻などは、国民年金から1~2級の「障害基礎年金」が支給されます。
サラリーマンや公務員などは、国民年金から1~2級の「障害基礎年金」が支給され、さらに上乗せ部分である厚生年金・共済年金から1~3級の「障害厚生年金」「障害共済年金」が支給されます。
つまり二重に加入しているので、二つの年金が支給されることになります。
障害年金の仕組みと支給額
●障害年金は生活の安定を図るための所得保障
公的年金制度は、国民の生活を守るための所得保障です。この制度では、加入者の生活が困難になった場合に備えて、3種類の年金を用意しています。
年をとって働けなくなり、支給される「老齢年金」。
一家の大黒柱が亡くなって、支給される「遺族年金」。
病気やケガで働けなくなり、支給される「障害年金」。
障害年金は、公的年金加入中に発生した病気やケガによって日常生活に支障がある場合、または十分に働けない状態となった場合、本人の所得保障とその家族の生活安定を図るために支給される年金なのです。
●配偶者や子供がいると加算されることも
障害年金の所得保障とは、1年間に金額にしていくらなのでしょうか?
支給額は「どの公的年金に加入しているか」「障害等級が何級か」よって異なります。
国民年金からは1~2級の障害基礎年金が支給されます。
障害基礎年金は定額で1級約100万円、2級は約80万円となっています。また、子供がいる場合は1人当たり約22万円が加算されます。ただし子供が3人以上いる場合、3人目からは約7万円となり加算額が減少します。
厚生年金からは1~3級の障害厚生年金が支給されます。その支給額は給料から天引きされている保険料の額に比例して決められます。また、1~2級には、65歳未満の配偶者がいる場合に約22万円が加算されます。3級には約60万円の最低保障額が設定されていますが、障害基礎年金部分や配偶者の加算がありません。
障害年金の対象となる傷病
●ありとあらゆる病気やケガが対象
障害年金の対象となる病気やケガは限定されていません。
眼や耳の病気や、手や足の障害などの「外部疾患」だけでなく、ガン、糖尿病、心臓病、肝臓病、腎臓病、高血圧など「内部疾患」や、うつ病、統合失調症、アルツハイマー病など「精神疾患」が対象となります。
つまり、ありとあらゆる病気やケガが対象ということです。
障害年金の認定基準によると、対象となる傷病は「疾病又は負傷」およびこれに「起因する疾病」と定められています。
「起因する疾病」とは、前の疾病又は負傷がなかったならば後の疾病が起こらなかったであろうというように、前の疾病又は負傷との間に因果関係がある病気をさします。
例えば、交通事故が元で精神障害となっても障害年金は支給されます。
●高次脳機能障害、アル中、HIVも対象
高次脳機能障害、アルコール中毒、HIV感染症なども受給できます。
また、障害認定基準は「難病」についても、日常生活能力などの程度を十分に考慮して総合的に認定するとしています。
障害の状態・等級
●「日常生活能力」「労働能力」がカギ
障害というと、まず事故による手足の負傷による外部疾患を思い浮かべるのではないでしょうか?
しかし、障害年金は、手や足などの外部疾患だけでなく、ガンなどの内部疾患、うつ病などの精神疾患も支給対象です。
したがって、障害年金でいう「障害の状態」とは千差万別です。障害認定基準では、傷病ごとに「障害の状態・等級」が詳しく解説されていますが、すべての病気やケガごとにその状態を網羅しているわけではありません。
外部疾患や内部疾患では、検査数値で比較的容易に等級の判断がつきます。しかし、精神疾患については障害の状態を検査数値で示すことができません。そこで障害等級の判断にあたっては、「日常生活能力」や「労働能力」が重要なカギを握ります。
目や耳などの疾患では、検査数値で一律に障害等級が決まる例外もありますが、「障害によって日常生活にどんな悪影響があるのか」ということは、外部・内部・精神のすべての疾患で共通の判断基準の一つです。
●2級の目安は「働くことができない」
障害等級1~3級に認定される「障害の状態」の目安は次の通りです。
補足説明しますと、全盲の人は働いていても1級の認定を受けます。
また、知的障害などの人で福祉的労働に従事していても、2級の認定を受けることがあります。つまり福祉的労働では労務可能とは認定されません。
障害認定基準
●障害認定基準は等級を決める「解説書」
どんな病気の方が、どんな状態で、どんな条件なら障害年金が受けられるのでしょうか?
障害の状態を定めた大枠が国民年金法、厚生年金保険法などの法令で定められています。法令で定められた障害の状態の解説書が「障害認定基準」です。実際の障害年金の等級は、この解説書によって判断されます。
例えば、交通誘導警備員のAさんが事故で右足を切断した場合、
障害等級では何級に該当するでしょうか?
障害認定基準を「肢体の障害」部分を参照してみましょう。
Aさんの障害等級は、どの関節から足を失ったかによって判断されると規定されています。
その関節の部分は、具体的に医学用語で示されています。
・ショパール関節以上で欠くもの→2級
・リスフラン関節以上で失ったもの→3級
障害認定基準によると、Aさんはショパール関節以上の足を失っていたので2級に該当しました。このように障害認定基準を参照することで、どの程度の障害が何級に該当するかが判断できます。
●精神病やガンにも認定基準がある
障害認定基準では、「眼」「聴覚」「鼻腔機能」「平衡機能」「そしゃく・嚥下機能」「言語機能」「肢体」「体幹・脊柱」「精神」「神経系統」「呼吸器」「心疾患」「腎疾患」「肝疾患」「血液・造血器疾患」「代謝疾患」「ガン」「高血圧症」「その他の疾患」の項目ごとに詳しく基準が解説されています。
このホームページにも障害認定基準が掲載されています。ご参照ください。